sagara

地謡と御囃子

相良 麗子

 

みなさんは、能をご覧になるとき、どのような点に着目してみていますか。きっと演者の方に注目して観ていますよね。でも、少し、視線を動かして、舞台全体を見てみるのも面白いですよ。私は、能を見るとき、御囃子や地謡に注目してみています。普段は、音楽などにはまるで興味を示さない私ですが、御囃子や地謡の独特のテンポには、ついつい引き込まれてしまいます。特に、地謡の皆さんの口元を見ているのは、面白いです。口元をじっと見ていると、口の動きと言葉が一致しているような、いないような…不思議な感覚を覚えます。声の出し方も独特で、興味深いです。

もうひとつ、私が着目している点は、御囃子です。舞を舞っている縁者と御囃子のみなさんとが、神経を集中させて呼吸を合わせている雰囲気は、神秘的だと感じます。実は、私は、つい最近まで、演者は鼓の音に合わせて舞っているものだと思っていました(ダンサーが、音楽に合わせて踊るように)。しかし、そうではないのだそうです。どちらかが、どちらかに合わせるのではなく、お互いに、気持ち・呼吸・間を、全神経を集中させて合わせているのだそうです。だから、舞台の上には、神聖な雰囲気が流れているのでしょうね。

お囃子の、それぞれの楽器の音色は、独特ですよね。これぞ、日本の音といった感じです。皆さんは、舞台上で、小鼓を奏でている方が、手に息を吹きかけている姿を見たことはありませんか。実は、小鼓は、湿気がないと、あの音が出ないのだそうですよ。逆に、大鼓は、よく乾燥させておかないと、あの音が出ないのだそうです。同じ鼓でも、扱いがぜんぜん違うのですね。奥が深いですね。

今回私は、地謡と御囃子について書きましたが、もっとたくさんの着眼点があると思います。事実、私は、お能を観るたび、気になる点、着眼点、見方がどんどん変化しています。観れば観るほど、能は、私が考えているほど浅いものではないのかもしれないと思えてきます。そこがまた、能の面白い点でもあります。だからこそ、こんなに長く、人々から愛されているのでしょう。私は、まだ、能に関しては初心者です。しかし、すっかり虜になっています。能には、もっともっとと探求心をくすぐる魅力がたくさんあります。みなさんも一緒に、能の世界にはまってみませんか。