能楽とは

 能と狂言、両方をまとめて能楽と称します。
 どちらも、奈良時代ごろに唐から伝えられた散楽や、
 平安時代に行われるようになった田楽などの民間芸能・儀式を基にしています。
 年代が下るにつれ、表現方法の違いにより能と狂言という2つの芸能に分かれていきましたが、
 祭祀性を強くもつ芸能であるという特徴を共有しています。
 能は音楽的・舞踏的要素が主とされ、象徴的な動作で物語が展開されていきます。
 一方で、狂言は滑稽なしぐさ・対話劇を主とし、写実的な動作を用いて表現されました。
 江戸時代には、能はその内容によって5種類に分類されるようになります。
 各種類からひとつずつ、つまり、1日に5つの演目が上演されていました。
 (これを五番立といいます。)
 狂言はその幕間に上演され、観客は能の幻想的な美と、狂言の楽しさに魅了されました。
 現代では、能1つ〜2つに狂言1つといった上演スタイルが多いですが、
 狂言だけの公演や能・仕舞の公演などもあります。

その他の知識

 能楽事始FAQ

 

 ◯開演前の準備編◯

 1.服装に決まりはありますか?
 A.基本的にドレスコードはありません。
 ただ、演者の方々は袴をつけ、正装で舞台に上がっておられるので、
 観客側にもそれなりに改まった恰好が要求されているのが本来です。
 普段の観客席は年配の方が多いため、お着物の方もちらほらいらして、
 全体的にきっちり・こぎれいな印象です。
 ただ今回は初めての方向けの企画でもあるので、極端にラフな服装でなければ大丈夫です。

 

 2.開始に遅れてしまうのですが、途中で入れますか?
 A.コンサートや演劇と同じく、途中の入退出は原則演目の切れ目で行って頂きます。
 今回の公演では、狂言が始まる前に休憩があります。
 やむをえず遅れていらっしゃる場合は、そのタイミングでご入場いただければ、
 速やかにご案内できます。

 

 3.休憩や終了時間の目安はありますか?
 A.公演によってまちまちですが、一つの演目が、能は1時間前後、狂言は30分くらいです。
 狂言一つ能一つという公演でしたら、休憩も入れて、2時間弱です。
 この度の能楽事始第5回公演では、ご挨拶の後に休憩が入りますが、
 狂言と能の間には入りませんのでご注意ください。

 

 4.能楽を観るのに事前の勉強や知識は必要ですか?
 A.知識は必須ではありませんが、最低限事前にこちらからお送りした台本や、
 このHPのコンテンツ等に目を通してきて頂けると、断然楽しめるでしょう。
 また、今回の演目である「藤戸」についても知識がある方が、
 より深く楽しむことができるかもしれません。
 しかし、知識に偏りすぎず、五感で観ることも大切です。
 能を繰り返し観ていく中で、自分にとって一番良い能楽への姿勢を探していってください。

 

 5.能楽堂への道がわからないのですが…
 A.国立能楽堂へは、JR千駄ヶ谷駅と、東京メトロ副都心線北参道駅の二つの最寄り駅があります。
 詳しくは国立能楽堂のサイトなどをご参照下さい。

 

 ◯上演中のマナー編◯

 1.上演中に音を立ててもよいですか?
 A.コンサートや演劇と同じように、上演中の能楽堂はなるべく音を立てぬよう気を配るべき空間です。
 台本を見ながら能を鑑賞する場合は、なるべく静かにめくるよう心がけましょう。

 

 2.狂言中は笑ってもよいですか?
 A.勿論OKです。演者の方々も直接リアクションが返ってくると、より力を込めて演じてくださいます。
 どんどん笑って楽しみましょう。

 

 3.どうしても眠くなってしまうのですが…
 A.能が催眠性を有するのは確かで、眠いものと思ってくださっても構いません。
 最初は感想が「眠い」だけという人でも、諦めずに色々な演目を観てみると、
 あるとき感動が得られる体験ができると思います。そうなったらしめたものです。
 ただし、開き直って寝てしまうのは演者の方にとってもあまり快いものではありません。
 うとうと程度に抑えて、眠気に耐えましょう。
 対策としては‥
 ・事前に仮眠を取る
 ・時間に余裕を持って来場し、ゆったりと開演を待つ
 ・能楽堂のもつ独特な雰囲気に慣れておく
 ・台本を熟読し、頭の中に入れておく
 ・休憩時間に仮眠を取る
 ‥などがあります。試してみてください。

 

 4.飲食・喫煙はしてもいいのでしょうか?
 A.歌舞伎座や映画館と違って、能楽堂では座席での飲食は禁止されていますので、
 休憩時間にロビーでお願いします。
 喫煙に関しては能楽堂によって定められている喫煙所にてお願いします。

 

 5.台本は見ながら観てもいいのでしょうか?
 A.はい。
 本来屋外で行われていたという能の起源もあり、能楽堂は客席が真っ暗にはなりません。
 少し暗くなる程度で、文字は読めますので、
 事前にお送りする台本を持って来られることをおすすめします。
 能の台詞はなじみのない古語で聞き取りにくいうえ、
 能面をつけた演者の台詞は、特に初心者には聞きづらいものです。
 台本無しで聞き取れるようになるには数年かかるともいいます。
 なるべく台本はあらかじめ読んでおき、当日は台本をちらちらと見る程度にし、
 目と耳と心を舞台に向けることが、楽しむコツです。
 重ねてのお願いですが、上演中の台本をめくる音は、
 舞台上の能楽師の方にとってもあまり好ましいものではありませんので、
 音を立てないよう注意してください

 6.拍手をするタイミングが分からないのですが?
 A.オペラやクラシックのコンサートと違って、きっかり「終わり」が提示されなかったり、
 拍手によって演者に満足を伝えるものではなかったりするのも能楽の面白いところです。
 最も多いのは、能独特の余韻に浸りつつ、演者が静かに舞台から去るのを見届け、
 まばらに拍手が起こり始めるというパターンです。
 ハッピーエンドのめでたい能でしたら、もっと爆発的な拍手が起こることもあります。
 演者の方が「拍手を忘れさせるほどの雰囲気で終える舞台にしたい」と思っている演目もあるくらいで、
 拍手をしないことが失礼につながるわけではありません。安心して余韻に浸ってください。

 

 ◯終演後の余韻編◯

 1.能楽を観た後にすることはありますか?
 A.まっすぐ家に帰り、お一人でその余韻を噛み締めるも良し、
 お友達と飲み屋にでも入って感想を語り合うも良し、
 能楽の消化方法は人それぞれで結構です。
 ただ、能楽事始は学生という若い世代のみを対象とした公演という側面もあります。
 ですので、能楽の感想や印象を同世代の人々と共有し、
 さらに深く能楽の楽しみを実感してほしいと考えています。
 そして、ぜひ今回だけではなく、
 その次またその次と長く能楽と言う芸能とお付き合い頂ければ幸いです

ブックガイド

 数多く出版されている能楽に関する書籍の中から、運営委員のおすすめをご紹介します。
 ぜひこの機会に書店に足を運び、お好みの一冊を探してみてはいかがでしょうか?

 

 ーガイドブックー
 『能楽ハンドブック』戸井田道三 監修、小林保治 編
  (三省堂、93年発行2000年改訂)
  能についての知識がぎっしり詰まった一冊。流派や曲目の紹介も充実しています。
 『狂言ハンドブック』小林責 監修、 油谷光雄 編
  (三省堂、93年発行2000年改訂)
  狂言についての多角的な知識がまとめられており、曲目紹介も充実。
 『初めての能・狂言』横浜能楽堂 企画、山崎有一郎 監修、三浦裕子 文
  (小学館、1998.)
  登場人物ごとに解説がついていてわかりやすいです。写真が綺麗です。
 『能って、何?』松岡心平 編
  (新書館、2000.)
  写真も交えながら能楽知識を紹介してくれる一冊。有名な曲の概要も知ることができます。
 『能へのいざない』味方玄 著
  (淡交社、2006.)
  能楽師の著者による実感のある解説が特徴。後見の仕事など、裏側の気になるところにも言及しています。

 

 ー写真集ー
 『能の四季』堀上謙 写真、馬場あき子 文
  (たちばな出版、2001.)
  演目を四季で見るという視点が新しく、魅力的な写真の多い一冊です。
 『面(おもて)からたどる能楽百一番』三浦裕子 文、神田佳明 写真
  (淡交社、2004.)
  能・狂言面に興味のあるあなたに。
  室町時代の面打ち師の面とともに、演目の物語や所見を丁寧に解説しています。
 『演目別にみる能装束』観世喜正・正田夏子 著、撮影 青木信二
  (淡交社、2004.)
  衣装や道具に目がいってしまうあなたに。細部の解説がとても楽しいです。

 

 ーエッセイー
 『お能/老木の花』白州正子 著
  (講談社文芸文庫、1993.)
  自らも演能経験を持つ白州正子のエッセイ集で、彼女の見た能の世界や、
  友枝昭世先生のお父様の演能世界に触れることができます。
 『能の女たち』杉本苑子 著
  (文藝春秋、2000.)
  能に登場する女たちの内なる思いを、斬新な視点で洞察しています。
  物語や舞台についての解説も充実。

 

 ー番外編ー
 『花よりも花の如く1〜7』成田美名子 著
  (白泉社、2001〜連載中)
  能楽師が主人公の漫画で、文章が苦手な方に導入として最適。
  入念な取材に基づいて作られています。
 『弱法師(よろぼし)』中山可穂 著
  (文藝春秋、2007.)
  現代小説。謡曲「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」を題材に、
  現代人の抱える心の弱さと叶わぬ恋を描いた短編集です。

 

 ※ブックガイドの作成の際、ジュンク堂書店池袋本店の在庫書籍を参考にさせて頂きました